ツチヤ兄弟の難削魂
ツチヤ兄弟の難削魂

サシ対談
ツチヤ兄弟の難削魂

Tsuchiya Brother Dialogue

代表取締役
土屋 大介(左)以下表記:大介
専務取締役
土屋 貴成(右)以下表記:貴成

父(会長)から家業を継いだ兄(社長)と弟(専務)。今でも週1で一緒に銭湯へ行くほど
仲のいい兄弟が、仕事に対するスタンスや会社の未来について本音で語り合いました。

Talk O1
家業を継ごうと思ったきっかけは?

  1. 大介

     

    僕は30歳までロン毛でチャラくて、日銭稼いでは遊び回るようなボンクラな人間やった。仕事も長続きせぇへんかったから、なんとなくオヤジに面倒を見てもらう形で会社に入れてもらったという感じかな。当時は真鍮加工がメインやったから、その手伝いをひたすらやってたんやけど、ホンマに毎日遊ぶことしか考えてへんかった…。

  2. 貴成

     

    そうそう、兄貴は昔チャラかったよな(笑)。僕が入社したのは結婚する直前で、ちょうどリーマンショックの頃やったと思う。勤めていた会社を辞めた後、就職先がなかなか見つからなくて。結婚もするし、ちゃんと働きたいという気持ちが強かったな。

  3. 大介

     

    まだ貴成が入る前、オヤジの知り合いの社長に「これからはステンレス加工や」「ここに印鑑押しとけ」言うて、半ば強引に機械を買わされてな。オヤジが借金までして僕に与えてくれた機械をムダにしたらあかんと思って、その頃からやっと責任感が生まれてきた。分からんなりに一生懸命機械と向き合ってたら、だんだん興味も湧いてきたんや。

  4. 貴成

     

    僕は入社直後から余っていた機械で試作品を作ったりしてたっけ。ネックレスの部品でチタン製の特注品を作ったり、刃物のカタログを穴が開くほど読み込んだり。その時間があったから、機械や刃物のことをしっかり勉強できたんかも。そのうち工場の設備もだんだん整って、部品も少しずつ買えるようになったよな。

Talk O2
ツチヤ精工の強みは?

  1. 大介

     

    やっぱり目に見える形で不良品のない完成品を、毎日コンスタントに生産できることやな。

  2. 貴成

     

    深江ファクトリーなら毎日1500個くらいかな。うちは1工程で全部できるから早いし何よりも正確。無人一発加工と高い精度の仕上がりが一番の強みやと思う。

  3. 大介

     

    他社よりも先に新しい機械や設備を導入して新しい技術やノウハウを先取りできているから、それも強みやな。業界の動向を見ながら、半歩先を行く今のバランスがちょうどええんちゃうかな。ただし、うちがやっていることは決して特別なことじゃない。いうても町工場の中で最下層の会社やから、僕らは僕らなりに進化していかなあかん。

  4. 貴成

     

    うん、僕もオヤジが引退してからは特に、会社を守っていかなあかんという気持ちが強くなってる。

Talk O3
これからこの業界はどうなる?

  1. 大介

     

    世の中はどんどん変化しているから、このままいけば10年後には業界が縮小するんちゃうかな。たとえば車業界は、2030年に向けてガソリン車ゼロを目指してるし。半導体業界も、シリコンウェハーからカーボンナノチューブに替わればバルブ自体が必要なくなるかもしれん。そうなると、モノを削る仕事がなくなる可能性だってあるもんな。

  2. 貴成

     

    そうは言っても、僕はやっぱり切削にこだわりたいな。今はとにかく目の前にある仕事をこなすことに注力してる。不器用な人間やから、兄貴みたいにまだ先のことはよう考えんねん。

  3. 大介

     

    僕はそこまで切削にこだわることはないと思ってる。オヤジのためにも僕らの家族のためにも、会社を存続させることが何よりも第一。切削にしがみついてたら、会社自体が倒れてしまうことになりかねんから。時代のニーズに合わせていかんと!

  4. 貴成

     

    そうやな。会社を守るためにも、今の技術やノウハウを違う分野に活かすことも考えていかなあかんのかな。

Talk O4
ツチヤ精工の未来は?

  1. 大介

     

    そもそも僕は、町工場というものが今後どんどん淘汰されて中小企業がまとまっていくと思う。AIや3Dプリンターの技術も進んでるし、ものづくりの根本が変わっていくんちゃうかな。でも、AIでは到底かなわないような人の技術も守っていかなあかん。町工場にはすごい職人さんがいっぱいおるから。僕らは大それたことはできんけど、自分とこの会社を守っていくことが町工場を守ることにつながればいいなと思ってる。小さいけど技術力で勝負できるような、大企業並みの仕事がこなせる工場を目指したいよな。

  2. 貴成

     

    そういうことやね。うちはすでに最先端の設備を導入して最先端の技術をどんどん取り入れてるし、兄貴が目指す方向には徐々に進んでいると思うよ。

  3. 大介

     

    だからこそ、ずっと勉強やな。ずっとお世話になってる得意先の信頼を潰したらあかんし。上がったり下がったりの業界やけど、うまくいってる時にこそ資金を蓄えて次に活かす準備をしてる。僕ら、借金もないし結構堅実やでな。

  4. 貴成

     

    堅実、めっちゃ堅実。小さい会社やし、常に危機感を持ちながら少しでも前進できるように頑張っていこうや。兄貴、これからもよろしく!